テキストサイズ

凍夜

第1章 氷雨


コールバックがないので、私は再び煙草ケースを探した。

大理石のテーブルの脚のかげに、それは落ちていた。
白いムートンの毛に埋もれるように、シャネルのロゴが覗いていた。

私は急いたようにそれを拾い、中からCOOLを一本取りだし、口にくわえた。

スワロフスキーのストーンが散りばめられたルームシューズに足を突っ込むと、そのままキッチンへ向かった。

部屋の中が肌寒かった。
もうそろそろ、ストーブの時期だと思いながらコーヒーを入れ、カウンターのスツールに腰掛けた。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ