凍夜
第6章 浸食
マサシは静香の唇を人差し指でじっと押さえた。
その間、静香は何度か歯ぎしりをして唾を飲み込んだ。
そこへ、隣室で寝ていた幼い娘が現れて、マサシは静香から体を離し、立ち上がった。
マサシは娘の口を開けさせると同じようにシートをしのばせた。
数分後、静香はソファから起き上がると、マサシを指さして、何かを呟きながら笑った。
娘は静香に飛びつくと「♪~♪~」
歌を歌った。
静香も娘に合わせるように体を揺らしながら歌を歌っていた。
〈ケタケタケタ!クックック……〉
何が面白いのか、母子は笑いこけた。
〈アッハッハ……クククッ……〉
〈フフフフ……クスクス……〉
楽しそうにカン高い声で母子のかわす会話の意味も不明で、マサシは気味が悪くなり、そこを飛び出した。