凍夜
第7章 海溝
いつものようにマサシと会った夜のこと、私達は手を繋いで歩いていた。
「ね?マサシ、私ね、今夜帰りたくないの。」
私がそう言ったら、マサシは歩調を緩め私を見た。
「家でなんかあったの?どうしたの?」
「そうじゃないの……。私ね……。」
私が口ごもるとマサシは足を止めた。
「ん?どうしたの?リナ?」
「……私達、汚いの?」
「リナは汚なくないよ。どうして?」
マサシが私の肩に手を置いた。
「だったら……。私達、一緒なんでしょう?二人とも汚なくないって言って?」
「なんか、イヤな気持ちにさせてごめん。俺の言い方が悪かったね……。」
マサシは私の肩に置いた手を腕に滑らせると
その手をしばらくみつめた。
そしてまた私の手を握り「二人ともキレイなんだよ。」と囁くと私の手を強く引いて歩き出した。