凍夜
第7章 海溝
《私の心に、飼い慣らされた悪魔》
それは、偶然を装ったかのように見えるが、必然だったのかもしれない……。
今となっては、どうでもよいことだけど…。
剥き出しの傷の痛みと、直向きな思いを共有し、貫く術しか知らない無垢で不器用なまでの私たちの青い愛の足跡の一部となったまでだった。
私は、マサシに、何も言わず、咄嗟に、トイレから飛び出して、ビルから、夜のススキノに、駆け出していた。
何処に向かって走っているのかは、わからないままに、気づいたら、バーまつもとのビルの下で、ふと、スカートのポケットの中に、手を入れて、握りしめて、くしゃくしゃになった物を、取り出して広げて眺めた。
汗が、それを、滲ませていたが、私はかぶりをふりながら、また、ポケットに握って突っ込んだ。
それは、ひょっとしたら、私の、願望であり、現実逃避に似た、本当の姿だったのかもしれない……。