
普通の幸せ
第1章 日常
「ただいま」
大音量でかけていたテレビの音に紛れて聞こえた博紀の声に、びくっとして飛び起きていた。
「あ、あれ~??早すぎね?」
時計を見たら22時過ぎだ。最近の博紀にしては光速と言っていいほど早い帰りだった。
これでも博紀の前では極力きっちりしていたかった俺は今の状況を見られた事に冷や汗ものだった。
しかも今日は夕食をスナック菓子とジュースで済まそうとしていたからテーブルの上はさながら若者の一人暮らし状態だ。
「今日は早めに帰ってきたよ。菜穂が寂しそうだったからね」
博紀が笑みを浮かべて言いながら俺を見つめる。
「そ、そうだったのか。すげぇ嬉しい」
俺も笑顔で答えながら居たたまれずにテーブルの上を片付け始めた。
「たまには外食しようか」
「え、いいよ……別に」
博紀の提案にノリ悪く返してしまう。
きっと深い意味はないし、俺の為に言ってくれているのだと分かっているのに、今は自分が惨めに感じてしまっていた。
「会社の近くに、新しいレストランが出来たんだよ。中に入った事はないけど、外装からしてすごく素敵な店なんだ」
「へぇ……」
「菜穂を連れて一緒に行きたいなって思ったんだが……」
「博紀の目に留まる店なんて、超高級店だろ?俺には似合わないよ」
つい卑下した言い方をしてしまう。最愛の恋人の前でこんな卑屈になってしまったのは、いつからだろう。
付き合ったばかりの頃から博紀は高嶺の花のような存在ではあったけど、愛し合っている自信から気にしたことはなかった。
俺の愛した博紀が俺を選んで愛してくれた事が俺の誇りであり自慢で。
それなのに、今は―――
大音量でかけていたテレビの音に紛れて聞こえた博紀の声に、びくっとして飛び起きていた。
「あ、あれ~??早すぎね?」
時計を見たら22時過ぎだ。最近の博紀にしては光速と言っていいほど早い帰りだった。
これでも博紀の前では極力きっちりしていたかった俺は今の状況を見られた事に冷や汗ものだった。
しかも今日は夕食をスナック菓子とジュースで済まそうとしていたからテーブルの上はさながら若者の一人暮らし状態だ。
「今日は早めに帰ってきたよ。菜穂が寂しそうだったからね」
博紀が笑みを浮かべて言いながら俺を見つめる。
「そ、そうだったのか。すげぇ嬉しい」
俺も笑顔で答えながら居たたまれずにテーブルの上を片付け始めた。
「たまには外食しようか」
「え、いいよ……別に」
博紀の提案にノリ悪く返してしまう。
きっと深い意味はないし、俺の為に言ってくれているのだと分かっているのに、今は自分が惨めに感じてしまっていた。
「会社の近くに、新しいレストランが出来たんだよ。中に入った事はないけど、外装からしてすごく素敵な店なんだ」
「へぇ……」
「菜穂を連れて一緒に行きたいなって思ったんだが……」
「博紀の目に留まる店なんて、超高級店だろ?俺には似合わないよ」
つい卑下した言い方をしてしまう。最愛の恋人の前でこんな卑屈になってしまったのは、いつからだろう。
付き合ったばかりの頃から博紀は高嶺の花のような存在ではあったけど、愛し合っている自信から気にしたことはなかった。
俺の愛した博紀が俺を選んで愛してくれた事が俺の誇りであり自慢で。
それなのに、今は―――
