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普通の幸せ

第2章 格差

「ちょ、あのっ、痛い痛いっ!!」

ウェイターは通路の一番奥にある裏口と思われる扉を開けると俺を勢い良く放り出した。

扉の直ぐ外は階段になっていたせいで、放り出された俺は数段とはいえ段差から派手に転げ落ちる。


「……っ、いってぇ~……何するんだよ…っ!?」


俺は自分の立場も忘れてウェイターの男に文句を言いながら睨み付けた。


「ここはな、お前が来るような所じゃねぇんだよ」


……あれ、今言ったの誰?思わず辺りを見渡してしまう。


男は倒れ込んでいる俺に歩み寄ってくると屈んで、俺の顎を乱暴に掴んで上向かせてきた。


そして整った顔を意地悪く歪めて近付けてくる。思わず息を呑んでいた。


「お前みたいな、頭悪そうで薄汚いガキの来る所じゃないって言ってんの。分かったか、坊や?」


「…………」


何も言い返せない。何を言われたのか、理解するのに時間がかかった。


「………な、なんで、お前にそんなこと……」


やばい、怒りと恐怖が入り雑じって声が震える。


「俺が言わなきゃ誰が言うんだよ。ここは俺の店。俺は、オーナーだから」


憎たらしい顔で憎たらしく強調した言葉で男が言う。


「…………っ」


ゴミのように捨てられた俺はゴミのように蹲っていたが、日が完全に暮れる頃には起き上がっていた。


そのまま、どうやって帰ったのか分からない。いや、普通に歩いて帰ったが、思考は完全に停止して何も考えられなかった。

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