食わず嫌い
第3章 チョコレート
「これさ、ルビーチョコっていうらしい」
「あ…」
そう言うと桐也は箱から一粒、ピンク色のチョコレートを取り出した。
それを俺の口に近づける。
「食べてみ」
俺はなぜか言われるままに口を開けてしまう。
ルビーチョコを口に含むと、甘酸っぱい味がした。
「どんな味する?」
「……」
桐也が嬉しそうな顔をする。
それはバレンタインコーナーで見た客たちの幸せそうな顔と同じだった。
「まあまあ、甘い…かな」
なんだろう、この気持ちは。
桐也が嬉しそうだと、俺も嬉しい。
「じゃあ、オレも…」
桐也がルビーチョコに手を伸ばした時、なぜか俺は自分から桐也にキスをしていた。
唇と唇が触れる程度のキスを。
「……歩」
桐也の声で我に返った俺は、慌てて桐也から離れようとした。