ネムリヒメ.
第7章 知らない自分.
……とまあ、そんなくだりがあったわけで
渚くんに顔を向けたけれど、新聞の陰なって彼の表情は伺えなくて、コーヒーから立ち上る湯気だけが見える
「ぇー、いいなぁ。オレも一緒に行きたい、ズルい」
目の前に視線を戻せば、葵くんが口を尖らせている
「…お前は仕事に行け」
「ちぇっ…いいなぁ」
渚くんの声に葵くんが頬杖をついて頬を膨らませながら、アタシの鼻をツンとつつく
「今度オレともデートしてよね」
で、デートって…
そんな甘い言葉を聞くのは久しぶりだな
「あ…うん」
葵くんの"必殺・オンナ殺しスマイル"に胸を鳴らされて赤くなる顔
この笑顔に落ちた女の子はごまんといるだろうに
しかし、アタシの場合
スーパー超絶いいオトコである楓の存在が鉄壁のストッパーになって、それを阻止しているわけで…