ネムリヒメ.
第11章 体温計と風邪薬.
………………
…ピピピピ…ピピピピ…
体温計の電子音がしてアタシは渚くんと一緒にそれを覗きこむ
『37.2』…
「下がったっ!!」
「おい…」
元気よく立ち上がったアタシに冷静な彼のちょっと待ったがかかる
「まだ微熱あるんだからはしゃぐな」
アタシを半ば無理やりソファーに座らせると、渚くんはホットミルクを入れてくれた
まだ微熱があるのにだいぶ楽とか言ってるあたり、きのうのあの切ない熱はどのくらい高かったのかと思うとゾッとする
「お前、ちゃんと今日も薬のんで寝てろよ」
「薬はのむけど…平気だよ」
「風邪はちゃんと治せ」
「…寝るのはやだ」
「やじゃねー…」
「無理!!」
「……」
彼とまるで、おいかけっこのような会話が続く
「…寝るの…やだもん」
渚くんに聞こえるか聞こえないかの声で呟く
「お前な…」
隣にいた渚くんの切れ長の目がアタシを見る
「っ…!!」
彼の殺気にも似た空気に気がついた時にはもう遅くて、口元を歪めながら迫りくる彼にあっという間にソファーの角に追い詰められるアタシ
彼が朝から出す艶かしい空気がアタシの思考回路を鈍らせる
本当にどっから出してんの…これ…
すみません、止めてください!!
すると目の前に迫る彼の顔が妖美に微笑んだ
長い指で顎を掴まれて、親指の腹で下唇をなぞられる
「なぁ…お前が風邪治さないと、うつんだろ
………一緒に寝たら」
「…っ」
その言葉と妖艶な眼差しに心臓が止まるかと思った