ネムリヒメ.
第3章 無くしたモノ.
ダイニングでそんな三人の会話がなされているのも知らず、
アタシは渚くんの部屋のバスルームで、お湯に浸かりながらぽっかりと天井を仰いでいた
甘いシャボンの香りが緊張から解き放ってくれる
さっきシャワーを浴びながら鏡を見て、彼につけられたであろう紅いシルシの多さに正直絶句したものの、
フワフワの泡が浮くバスタブにカラダを沈めると一気に力が抜けてリラックスできた
無心でバスタブの泡を弄んでいると、ふと何かを思い出す
──あれ…なんか…
お風呂…入るの初めてじゃないかも…!?
んー……
コンコン!!
「…っ!!」
『千隼、大丈夫か?』
そこで、突然扉を叩かれ聞こえてきた彼の声にハッとする
しかし…
ズルッ!!
バシャッ…
「おわっ…!!」
沈むッ…沈むっ!!
お尻が滑ってバスタブで溺れそうになるアタシ
こんなのバレたら恥ずかしすぎるっ!!
『おいっ!?』
変な水音とアタシの変な声にさすがに不審がる渚くんの声
「ぁっ、うん、平気っ!!」
あぁ、危ない…
ボーッとして沈むところだった
……でも、さっきのカンジなんだったんだろ…
少し気になりながらも、アタシはシャワーでカラダを流すと平然を装ってバスルームをあとにした