ネムリヒメ.
第5章 シャンプーとアイスクリーム.
一瞬、部屋に沈黙がながれた
しかし、すぐに彼の顔が崩れる
「おい…」
顔を歪める彼にすかさず返す
「シャンプーないの」
「お前…もっと色気のあるコト言えねーの」
「だからシャンプー」
「っ…シャンプーシャンプーうるせーな」
勝手に甘い空気を作り出したのは渚くんだ
彼の言葉にアタシもちょっとムキになる
「だから シャン…っ」
しかし、それ以上の言葉を発するのは許されなかった
気がついた時にはもう
アタシの唇は彼の唇によって塞がれていたから
驚いて彼のカラダを押し返すと、一旦離れた彼の瞳が妖しく光る
あっという間に彼はアタシを壁際に追い詰めると、壁に手をついて妖美に微笑んだ
壁と渚くんに挟まれ、逃げ場を失ったアタシ
ひんやりとした壁の感触が背中を通して伝わってくる
しかし、彼の漆黒の瞳に射抜かれて、アタシは彼を見つめ返すことしかできないでいた
彼に聞こえてしまうのではないかというくらい
心臓が大きな音をたてて騒ぎだす