ネムリヒメ.
第5章 シャンプーとアイスクリーム.
聖くんの部屋をあとにして自分部屋の近くに差し掛かると、部屋の前の廊下に誰かいるのに気がつく
綺麗な明るい金色の髪が目についた
「…葵くん?」
少し離れた所から彼の名前を呼ぶ
彼は顔を上げてアタシの姿を確認すると、満面の笑みを浮かべてパタパタと手を振った
アタシは聖くんが貸してくれたカーディガンをずり落ちないように抑えながら彼に近づく
メンズものだからさすがにアタシにはサイズが大きい
余った袖に手は隠れ、裾の中におしりまですっぽりとショートパンツの丈がぜんぶ収まっている
歩く度にカーディガンが揺れて、まるでアイスクリームのような聖くんの甘い匂いがした
「葵くん、どうしたの? もしかして待たせちゃった?」
「ううん、大丈夫だよ」
そう微笑む彼は、なんだか昼間と少し印象が違った
昼間の青い瞳が印象的な彼の姿とは違い、オシャレな黒ぶちのメガネをかけ
その奥には凛とした黒い瞳が覗いていた