ネムリヒメ.
第5章 シャンプーとアイスクリーム.
ぁ…
そこって…
髪を払われ、露になる首筋と
そこに散らばる 無数の紅い華…
それは…紛れもなく渚くんが刻んだ 彼のシルシ
それを葵くんに見られて、なんとなく彼から目を背けた
葵くんの指がそっと首筋に触れて、渚くんに散らされた紅い跡の上を行き来する
「っ…ん…」
その感覚にピクリと肩が震えて声が漏れる
「こっち向いて…」
葵くんが優しい声色で囁く
でもこんな時に、どんな顔をしていいかわからない
そっと目線を彼に戻すと、彼の瞳に自分の顔が映りこむのがわかる
でも、そこには昼間の爽やかで優しい葵くんはいなくて、その代わりに飛び込んできた彼の表情に背筋がゾクリと震えた
アタシを見つめる葵くんの顔は、優しい声色とは裏腹に
メガネの奥で瞳を艶やかに光らせ、まるで獲物を狙っている…獣のような目
そんな彼の瞳から逃れることができず
渚くんでもない…
聖くんでもない…
葵くんが作り出す甘くて危険な空気がアタシを飲み込んでいく
ただ、心拍数だけがあがってカラダが動かなくなっていた