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完全なる敗北───。

しかし、この場合はそれを認める事は悪い事ではない。

現実を受け止め、今後に活かせばいいのだから。

自分は彼女にはなれない。

であれば、自分の持っている物を磨き上げるしかない。

綾芽の話を耳にし、橘はより一層の努力を心の中で誓った。

宴も酣の中、新婚の二人が退席する事になる。

その前にお祝いの言葉を伝えようと、秘書三人娘は葛城の許へと近付いた。

「葛城取締役！」

そう言って声を掛ける三人。

葛城はその声に振り返り、三人の姿を認めると微笑みを浮かべた。

「本日はおめでとうございます」

「有難う。楽しんで頂けておりますか？」

そう言いながら葛城は隣にいる綾芽の手をそっと引く。

それに気付いた綾芽は、話していた相手に断りを入れると、三人の方へと向き直った。

「お忙しい中、お越し頂き有難うございます」

そう言って頭を下げる綾芽の優雅な身のこなしに、三人娘は溜息を零す。

１年前までは普通の暮らしをしていたとは思えない、全く隙のない品のある所作。

その中に嫌味のない色香が混じり女性としての魅力を高めている。

品と言うものには育ちは関係ないのかも知れない。

裕福な家庭に育ったからと言って、上品になるわけではない。

本人が意識してそれを身に付ければ、備える事が出来るものだと三人は改めて感じたのだった。