
お嬢様♡レッスン
第123章 【番外編】執事の受難
今後、爵位を継いだのであれば、尚更、自由はなくなる。だから、彼は今のこの瞬間を精一杯楽しんでいるのだと言う事にフレデリクは気付いた。
それに気付くと、何だかダグラスが気の毒に思えて来る。それなら少しの事は我慢をしよう。
フレデリクはそう思い、二人を待ちながら、秋葉原の街へと視線を巡らせた。
カラフルで雑多な街並み。他の国から来た観光客や買い物客も多い街。
先の大戦時に空襲で焼け出された街の建物の歴史は浅く、この国が急いで復興して来た為か、バラバラで統一感がない。
ゴチャゴチャしていて、玩具みたいな街だとフレデリクは思う。それでも駅前等は綺麗に整備され、近代的で美しい建造物が建っていたりする、不思議な街。
そんな風に街の風景を眺めていると、白河に腕を引かれたダグラスが戻って来る。手には戦利品を抱えて満足気な表情で。
フレデリクは疲れた顔の白河に労いの声を掛けた。
白河は、フレデリクが女性に囲まれていなかった事に安堵し、次の目的地に向かう旨を彼に伝えた。
「ダグラス、もういいの?」
そうフレデリクが尋ねると、ダグラスは無邪気な笑みを浮かべて『満喫したよ!』と答えた。
彼等はその後、浅草まで行くとお決まりの雷門を潜りお参りを済ませ、屋形船で遊覧を楽しんだ。
陽が落ち、夜の帳が降りて来るとネオンの灯りが、水面に移って綺麗だった。彼等はその景色を川から楽しんだ後、台場で迎えの車に乗り込み、邸へと戻る。
一日燥いでいたダグラスは、車窓から流れるネオンを黙って見ていた。その横顔が何だか寂しそうで、フレデリクの心は少しだけ、彼を憐れんでいた。
