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お嬢様♡レッスン

第123章 【番外編】執事の受難


フレデリクは彼の事をそんなに良く知っている訳ではない。まして、綾芽に変な恰好をさせた彼をフレデリクは良く思ってはいなかった。

しかし、兄の背中を見ていて分かったのだ。家を継ぐ事がどんなに大変な事であるのか。

優秀な執事を雇っていたとしても、最終的な判断は、主人が下す。愚かな選択をすれば、家が傾く事もある。

今日一日、おバカな行動をしていたダグラスではあるが、彼は曲がりなりにもケンブリッジの学生である。そして伯爵家の長男であるのだ。愚かな男ではない。

これから背負っていく物の重圧から、ひと時だけの解放。

朝出掛ける時に綾芽に言われた事がある。

「ダグラスの好きな様にさせてあげて」

彼女はそう言ったのだ。それはきっと、彼女が日本に戻って背負った重圧をダグラスが背負っている物に重ねて見ていたからなのかも知れない。

白河は、急に大人しくなったダグラスに心配そうに声を掛けた。

「ダグラス様、お疲れですか?」

白河の問い掛けに、ダグラスは視線を彼に移すと、首を横に振った。

「疲れていないよ。今日の思い出に日本の景色をもっと目に焼き付けておきたかったんだ」

そう言ってダグラスは微笑んだ。

今の日本にはニンジャもサムライもいないけれど。

古い物と新しい物が共存する不思議な国、日本。その一部を垣間見る事が出来てとても楽しかった。

人は親切で、異国人の自分に温かく接してくれ、もてなしてくれる。

そんな日本人と日本がますます好きになった。

こんな機会を与えてくれた、綾芽と東乃宮の人達にダグラスは感謝した。

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