お嬢様♡レッスン
第124章 【番外編】男達のバレンタイン事情
あの時は、綾芽に対し特別な感情等、持っていなかったと柳瀬は思っていた。彼女を何度も求めたのは、ただ単に身体の相性が良かった為。当時の彼はそう思っていた。
しかし、彼女がいざ自分の手の届かない所に行ってしまうと、何故か満たされない日々が続いた。
身体ではなく、心が。
綾芽の執事の任を解かれた後、彼女の傍に戻る為に色々と各策したが、彼女は行方不明になってしまった。
その時に、"彼女を抱けないのか"と言う気持ちよりも、"彼女に生きて逢えないのではないか"という絶望を感じた。
生きて戻って来てくれるのであれば、多くは望まない。唯、生きてその姿を見せてくれればそれでいい。
柳瀬はその時になって初めて、自分が綾芽の身体を求めていたのではなく、彼女の存在自体を求めていたのだと知った。
白河と年が近いせいもあり、一緒に行動する事が多かった柳瀬。屈託のない明るい性格の白河と対照的に大人しい彼。人々の注目を集めるのは、常に白河の方だった。
しかし、綾芽は白河も自分も同じ様に扱ってくれ、ともすれば自分を優先してくれる事さえあった。
自分の存在を認めてくれる彼女が居なければ、いつまでも日陰に人知れず生息する雑草だったかも知れない。
綾芽は、そんな自分に優しい光を注いでくれた太陽の様な存在だ。