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お嬢様♡レッスン

第124章 【番外編】男達のバレンタイン事情


だから、綾芽を怒らせ、最悪な形で離れる事になったけれど、遠くからでも彼女の姿を見ていられればそれでいい。

もう、許されようとも思わない。

唯、彼女が笑っている姿を見る事が出来るのであればそれでいい。

その太陽の光だけで、自分は十分生きていけるのだから。

そんな彼の願いは聞き届けられ、彼女は戻って来てくれた。傍には葛城が寄り添って。

それでも彼女が生きて、そして笑っている。そしてそれを見る事が出来る。それだけで十分だと思った。元々、自分の手の届く女性ではなかったのだ。

もう肌を重ねる事は出来ないけれど、彼女は自分を許し、傍に居る事を許してくれた。これ以上望んでは罰が下るだろう。そんな風に柳瀬は思うようになった。

「……せさん? 柳瀬さん!」

自分を呼ぶ声にハッと吾に返る。顔を上げると綾芽が心配そうに顔を覗き込んでいた。

「すみません。少し考え事をしておりました」

綾芽を安心させる様に微笑むと、柳瀬はそう言って立ち上がる。綾芽はホッとした笑顔を見せると、彼の前に包みを差し出した。

「寒い中、結婚式の為の造園作業、頑張ってくれて有難う。いつも綺麗なお花を生けてくれて有難う。これ、感謝の気持ちです。これからも宜しくお願いしますね?」

そう言うと綾芽は柳瀬のダウンジャケットのポケットに包みを押し入れ、踵を返し足早に立ち去った。

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