お嬢様♡レッスン
第124章 【番外編】男達のバレンタイン事情
午後1時を回り、主人達の昼食が終わると、使用人達のランチタイムが始まる。とは言え、朝食時と違い一斉に顔を揃える事はない。皆、交代で食事を摂るのだ。
執事や家令は、大抵、料理長やメイド長等の上級職の者達とランチを共にする。白河はどうもこの時間が苦手だ。
と言うのも、邸で育った彼を子供の頃から知っている者ばかりで、殆どの者が小父や小母の様な年齢だ。オマケに自分の父は料理長ときている。
故に、揶揄われるのが常なのだ。
例え本館の方に逃げようとも、状況は変わらない。唯、父親がいないだけで、他は全て顔馴染だ。
「おい、巽。お前はチョコ、幾つ貰ったんだ?」
意地悪な笑みを浮かべて、白河の父親が唐突に口を開いた。
「何のことでしょう?」
引き攣った笑顔を浮かべ、息子が父の問いに恍けてみせる。それをニヤニヤしながら、安岡女史達が彼等の会話を楽しむのだ。
「今日はバレンタインだろ? チョコの一つか二つは貰ってんだろ?」
「さぁ? 私は興味がありませんので……」
「ひょっとして……。一つも貰えてないのかい?」
親子の会話に安岡女史が割って入る。