お嬢様♡レッスン
第124章 【番外編】男達のバレンタイン事情
「止めて下さい! オ……私は、もう子供じゃないんですからねっ!!」
四方八方から伸びて来る手を払い除けながら、巽は立ち上がる。
「あんまり私を揶揄うと、ある事ない事、高月さんに言いつけて減給して貰いますからねっ!!」
「ブーブー!! パワハラ~!!」
「職権乱用!!」
「ああ! もう煩いです!! 私は仕事に戻りますっ!!」
そう言うと巽は、怒りに任せて勢いよく扉を開け、まるで重い物を床に叩き付けたような足音を響かせて、休憩室から出て行った。
後に残された大人達は、そんな彼の様子に優しい笑みを浮かべていた。
白河とて分かっている。執事の仕事は気の抜けない仕事だ。気の張った彼の心を解そうと、皆が気遣ってくれている事を。
だが、それが悔しくもある。
そんな心配をされずとも、頼られる執事にならなくてはと思う。
高月だって、まだ20代なのに。皆から恐れられる程に、その手腕を認められている。
肩を怒らせ眉間に皺を寄せて廊下を歩いていた白河は、気分を落ち着けようと裏庭で頭を冷やす事にした。