お嬢様♡レッスン
第124章 【番外編】男達のバレンタイン事情
「知ってる。リュウ兄もタツ兄もマコ兄も、綾芽お嬢様の事が好きなんだよね? でもいいの! マナ、お嬢様に負けないくらい、頑張って素敵な人になる!!」
愛華はベンチから立ち上がると白河の正面に立つ。
「マナが大人になるまで……。その間はお嬢様の事好きでいてもいいよ?」
そう言うと彼女は素早く白河の頬にチュッと可愛らしいキスをすると、恥ずかしいとばかりに両手で顔を隠し、走り去って行った。
白河は、茫然とその後姿を見送る。
頬に残る愛華の唇の感触。まだ子供の拙くあどけない口付け。
愛華がどこまで本気なのか。本気だとしても、それが何時まで続くのかは分からない。
しかし、今の彼女の気持ちは疑いようがない。裏庭に来たとしても、自分に逢えるかも分からないのに、訪ねて来たのだ。
もし、逢えなかったとしたら、どうするつもりだったのだろうか。自分に逢えるまで、待つつもりだったのだろうか。
白河は何となくではあるが、自分は彼女から逃れられないのではないかという予感がしていた。
少しずつではあるが、白河の心が動き出した瞬間だった。
しかし、愛華と障害なく交際が出来る年齢になるまでは、後数年。
白河の春はまだ遠いようである。