お嬢様♡レッスン
第124章 【番外編】男達のバレンタイン事情
陽もだいぶ傾き、東の空の色が紺色に変わり始めた頃、杜若は放していた馬達を馬房へと戻す。
その前に寝転がって遊んでいた彼等の、身体に付いた泥や汚れをブラッシングで丁寧に取り除いてやる。
彼等が外で遊んでいる間に馬房の掃除を終え、水桶を洗い新鮮な水へと取り返た。毎日、彼等が気持ち良く過ごせるように心を配るのが莉玖の仕事である。
子供の頃から馬に親しみ、愛着を持っているせいなのか、それを仕事だと思った事はないし、苦になった事もない。
飼葉を与え、馬房の隅で一休みしていると、綾芽がひょっこり顔を覗かせた。
「おー? どうした?」
彼女に気付いた杜若が声を掛けると、綾芽はバケツを手に姿を現す。
「今日、バレンタインでしょ? チョコレートの代わりにリンゴをこの子達にって思って……」
そう言うと綾芽はバケツの中を杜若に見せた。そこには、彼等の好物のリンゴと角砂糖が入っていた。
「おー! サンキュッ!こいつ等、喜ぶわ」
そう言って杜若が笑う。
「あげてもいい?」
「ああ。でもちょっとだけな?」
「ええ。残りはまた明日にでもあげてね?」
「ん……」
綾芽の言葉に、杜若は言葉少なく頷いた。