お嬢様♡レッスン
第124章 【番外編】男達のバレンタイン事情
「私は、高月がカーテンを開けに来たついでに渡そうとしただけです。今日は本館に行く用事もないですし……」
「誰かに託ければいいでしょう?」
「それは嫌です。私の事だもの、私がきちんと自分でするべきだわ」
そう言うと綾芽はガバッと身を起こした。突然何事かと葛城が目を丸くしていると、綾芽はサイドテーブルに手を伸ばす。
「はい。これ……」
彼女はテーブルの上にある箱状のものを取り上げると、それを葛城に差し出した。それは、先程彼女が机の引き出しの中にしまった物と同じ模様のラッピングが施された物だった。
「高月に渡す前に、慎吾さんにもと思ってテーブルの上に置いておいたのだけれど、やっぱり手で直接お渡しする方が良いかなって……」
「先にテーブルに置いておいたと言う事は、私を一番に考えてくれたと言う事ですか?」
「当たり前でしょう? 私の一番は常に慎吾さんですよ?」
そう言ってにっこりと微笑む綾芽の頬に、葛城は手を伸ばし包み込む。
「綾芽……」
自分の額を彼女の額に押し当てて、唇が振れそうな距離で彼女の名前を紡ぐ。
少し掠れた低い声。唇に掛かる吐息に、綾芽の胸は高鳴り始める。