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お嬢様♡レッスン

第21章 Lesson 9♥ご奉仕しましょう

「色々とお調べになっている様ですので、様式等については細かく説明は致しません。取り敢えず、自由花から始めて行きましょう」

「はい」

華道(生け花)には流派に寄っても様々な様式があるようだが、大まかに「立花(りっか)」「生花(しょうか)」「盛花(もりばな)」「自由花」に分けられる。

立花は細長い花瓶に生ける様式で、書院造(床の間)に飾る為に確立したものである。

生花は茶室の床の間に飾る為の様式で、華美になり過ぎず、かと言って質素になり過ぎない(客人をもてなす為)絶妙のバランスで生ける必要がある。

盛花は主枝・副枝・客枝の三種類の花を使って風情を表現する生け方で、枝の角度などが細かく決まっているのが特徴だ。

自由花は特に決まったルール等はなく、フラワーアレンジメントに近く、生ける者の個性が出やすい。

一般的な華道のイメージは、水盤と剣山を使った生花や盛花だろう。

「昨日、生けてあったお花は柳瀬さんが生けた物ですか?」

綾芽は花を選びながら、柳瀬に尋ねる。

「いいえ、あれは巽がお嬢様をおもてなしする為に生けた物ですよ」

柳瀬も同じ様に花を選びながら答えた。

どうやら彼は花瓶に生ける様だ。

綾芽は剣山を使って生けてみたかったので、水盤を用いる事にした。

「えっ!そうなんですか?」

「ええ。意外と繊細でしょう?」

「そんな事仰ると『意外とは余計だっ!』って怒られますよ?」

「おや、1日で巽の性格を把握されたのですか?」

柳瀬はふと手を止めて綾芽を見る。

「そんなんじゃないですけど、昨日一日で白河さんの事が少し知れたとは思います」

白河と過ごした時間を思い出しているのだろうか。

綾芽は笑みを浮かべていた。

柳瀬は白河に対し軽く嫉妬を覚える。

生意気な少年がそのまま大きくなった様な巽。

一見大雑把に見えるが、実はナイーブな一面もある。

それが女性の心を擽るのだろうか。

年が一つしか違わない為、よく行動を共にしていたが、柳瀬が好ましいと思う女性は尽く白河に持っていかれていた。

柳瀬は大人しく優等生タイプで、白河は悪ガキタイプ。

子供の頃は『広夢君を見習いなさい』と白河はよく言われていたが、柳瀬は白河が羨ましかった。

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