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お嬢様♡レッスン

第3章 これがお仕えする者達です、お嬢様

同じ轍を踏む訳にはいかない為、綾芽には数名の執事が揃えられていた。

表向きは、だが。

高月もその1人である。

高月は元々は成熟した大人の女が好みではあるが、綾芽の色香に触れ、年下の未だ未開発のお嬢様を自分の手により育てるのもそれなりに楽しめそうだと感じたのだった。

まあ、自分1人で育てる訳でもないのだが。

それに昔程、主従関係間の恋愛については厳しくも無くなった今、綾芽の心を掴み東乃宮家の総帥が認めれば、一族の列に加わる事も可能だ。

高月や葛城は外様であるが他の執事達は、代々、東乃宮家に仕えて来た家の出で、純粋に東乃宮家への奉公と考えており、野心等の欠片も見当たらない。

勿論、選ぶのは綾芽であるが、現在の所、頭一つ程リードしているのは自分であると高月は思っている。

葛城を除いては。

しかし葛城は家令であり、邸全体の運営を任せられており多忙な為、お嬢様の教育自体を彼自身が行なうとは考え難い。

となれば、白鳥館の執事長を任されている自分に利がある。

高月はそう踏んでいた。

「御馳走様でした」

綾芽がそう言ってカップをソーサーに重ねた音で高月は我に返る。

「それでは参りましょうか?」

「はい」

綾芽は素直に返事をすると、ソファから立ち上がった。

それを確認してから高月は扉を開けると、綾芽を広間へと案内した。

そこには、代々、東乃宮家に務めてきた使用人達が集まり、綾芽に紹介されるのを待ち侘びていた。

「お嬢様、この者達がこれからお嬢様にお仕えする者達です」

そう高月に紹介されると、待ってましたとばかりに皆に囲まれる。

綾芽の姿を見て涙を流す者。

父母の事故について弔慰を述べる者。

そのどれもが綾芽を気遣い、綾芽がこの家に入る事を歓迎してくれていた。

綾芽は一度に親戚が増えた様に感じ、擽ったかった。

驚いた事に、皆から母を奪って逃げた父を悪く言う者は居なかった。

父母は皆から愛されて居たのだと知り、熱い物が込み上げて来た。

「皆さん、お嬢様はお疲れです。今日はもうその辺にして持ち場にお戻りなさい」

一向に綾芽を放そうとしない使用人達に高月が命じると、使用人達は残念そうに持ち場へと戻って行く。

此処へ来てからほんの数時間の間に綾芽は笑顔を取り戻した様だった。

「さて、お嬢様」

「何でしょう?高月さん」

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