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お嬢様♡レッスン

第23章 執事のお仕事◆杜若莉玖の場合

一通りチェックが終わり、書類を高月に提出した後、綾芽の部屋に彼女を迎えに行く。

ノックをし綾芽の返事を待つと、部屋の中から『どうぞ』と入室を許可する声が聞こえたので、扉を開けて中へ入る。

綾芽はきちんと身支度を整えており、パソコンの前で乗馬に関するサイトを色々と見て回っていたようだ。

「杜若さんの記事、読みましたよ?本当に凄いですね!」

「そんな、大した事はありません」

「大した事ありますよ!だってオリンピック候補生なんでしょ?それだけでも凄いですよ!」

「………」

綾芽のキラキラした瞳に見つめられて、杜若は顔を赤くして言葉を失った。

「あれ?どうしたんですか?」

「何でもないです。それじゃ行きますよ?」

杜若はそう言うと踵を返して足早に出て行ってしまう。

綾芽も慌ててそれに続いた。

(杜若さんて、照れ屋さんなのかな?)

耳を真っ赤に染めて前を行く杜若に綾芽はそう感じ、フフッと小さく笑った。

「杜若さーん!待って下さい。置いて行かないで」

綾芽は小走りで杜若に追いつくと、彼の顔を覗きこんだ。

「っ!!」

突然、綾芽の顔が目の前に現れ、杜若は仰け反る程驚く。

綾芽の顔を見ると、朝のハプニング時に遭遇した彼女の裸体がチラつくのだ。

朝食の時に始終無言だったのも、それが原因で邪念を払うのに必死だったからである。

「なっ、なんですか?お嬢様」

「だから、置いて行かないでって言ったんですけど!」

「すっ、すみません」

「もう少しゆっくり歩いて貰えますか?」

「は、はい」

「それから、『杜若』って自分の事を呼んでるみたいなので、『莉玖君』って呼んでもいいですか?」

「お嬢様のお好きな様に呼んで下さい」

「そう?それじゃあ、思い切って『リク』って呼び捨てにしちゃおうかな?私の方がお姉さんだし!」

「どうぞ御自由に…」

「そう?じゃあ、決まりね!それから、従兄弟なんだし、あまり畏まらないでね?それじゃあ、行こっか?」

そう言ってスキップしながら先を行く綾芽。

その後ろ姿を呆然と眺める杜若。

急に砕けたお嬢様に驚きを隠せない。

でも、何となく綾芽の心情は理解出来た。

たった一人で知らない世界に放り込まれ、頼るべき祖父は海外にいる事が多い。

そうなると、一番近い血の繋がりを持つのは自分達、杜若一家である。

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