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綾芽の目は哀しみに満ちていた。

『怒り』ではなく『哀しみ』

彼等は綾芽の信頼を裏切り、彼女を失望させた。

怒りであったならば、まだ良かったのかも知れない。

まだ信頼する心が残っているからこそ、怒るのだから。

しかし、信頼する心を失った果てに訪れる哀しみは、その哀しみが消えても信頼を取り戻すのは難しい。

その事に、今更ながら柳瀬と白河が気付いた。

そして絶望する。

綾芽との間に、今度こそ越えられない壁が出来てしまったからである。

その壁を綾芽に作らせたのは自分達自身。

一時の愚かな行動が、自分の首を絞めてしまったのだった。

「明日、様子を見に船が来ますね？それで貴方達は帰って下さい。黒崎、貴方は残って下さい。それから、お爺様に連絡をしてメイドを何人か寄越す様、伝えて下さい」

「畏まりました」

「私は疲れたので休みます」

そう言うと、綾芽はテーブルから降り、二階への階段へと足を向ける。

「綾芽！待てよ！」

白河が綾芽を引き留める。