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お嬢様♡レッスン

第66章 ありがとう

黒崎は綾芽に向き直り、姿勢を正すと深く頭を下げる。

「お嬢様、この黒崎、執事としてお嬢様にお仕え出来た事を大変光栄に、そして幸せに思います。最後に、自分の我侭を聞いて下さり、有難う御座いました」

急に執事の顔になる黒崎。

「いやぁね!急に改まったりして」

「最後のけじめです。ご挨拶が出来て良かった。速水達はそれすらも出来ませんでしたから…」

「あ…」

黒崎の言葉に綾芽の心はチクンと傷む。

「すみません。こんな事を言うつもりはありませんでしたが…。ですが、あいつ等もあいつ等なりにお嬢様の事を想っておりました」

「………それは分かっているつもりです」

「お嬢様の心情を思えば当然の事と思います。しかし、幼馴染としてあいつ等の気持ちも分かるから…」

「お兄ちゃんは本当に優しいね」

「え?」

「私、もう怒ってないよ?唯、苦しかったの。どんなに私の事を好きでいてくれても、全員の気持ちには応えられないから…」

「だから突き放したんですね」

「でも、あの時はまだ『許せない』って気持ちもあったし、どうしていいのか分からなかったの。それでお見送りに行けなかった…」


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