無料で楽しめるちょっと大人のケータイ小説

「ふぅ…。やっと帰ってくれましたね」

高月が出て行った扉に鍵を掛けると、葛城が溜息を零した。

「あの…、本当にクビになったんですか？」

背後に立っていた綾芽が、胸の前で手を組み、心配そうに葛城に尋ねる。

「え？ああ、冗談ですよ。でも、高月が家令に上がったのは本当です」

葛城は、振り向くとにっこりと笑って綾芽に答えた。

「じゃあ、葛城さんは…？」

「先程、高月が言ったでしょう？貴女の家庭教師です」

「あの、婚約者って言うのは…？」

「すみません。まだ、貴女の気持ちもはっきり確かめておりませんのに、周りが先走ってしまって…。決定ではありません。唯、私が旦那様にお願い致しました。貴女と結婚を前提にお付き合いを正式にしたいと…」

「嘘…」

葛城の言葉を聞いて、綾芽の目から滴がポロポロと零れ出した。

「ああああああ！泣かないで下さい」

葛城は慌てた様にそう言うと、ポケットからハンカチを取り出し、綾芽の目元を拭う。

「だって…。ヒック…。うっ…くっ…」

「そんな可愛い顔で泣いていると襲ってしまいますよ？」