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「実は、旦那様が綾芽様との交際を許す代わりに、条件があると仰いまして…」

「ええ、それで？」

「執事を一人、預かる事になりました」

「それが、どうかしたんですか？」

「私は彼を預かり、杜若がお世話が出来ない時には、彼にお願いしようと思うのですが、如何でしょうか？」

「別に構いませんけど…」

「それが、白河なのですが、大丈夫ですか？」

「え…」

「彼は、本気で執事を目指すと言っております。何でも、貴女に宣言したからと」

確かに彼の決意は、この島の砂浜で聞いた。

「でも…。私は…」

「彼がどんなに貴女を愛していても、仕事は別の話です。彼に一人前の執事になって頂く為の精神修行とも考えております。貴女が彼に逢いたくないのは、彼を傷付ける事が怖いのでしょう？」

「………」

「貴女にも、それに慣れて頂かなければなりません。使用人の一人一人に心を砕くのは、働く者にとって、とても励みになりますし、良い事ですが、男女の仲は別です」

「私もそうでしたが、使用人は『人』ですが、主人の『物』なのです。使用人はそれを分かって働かなければならない。そして使う主人もそれを理解していなければなりません」