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すると突然バタバタと船内が慌ただしくなった。

船員の一人が、何かを手にして二人の下へと姿を現す。

「竜巻が発生しました！万が一に備えてこれを！」

そう言って彼が差し出したのは救命胴衣だった。

葛城はそれを受け取ると、急いで綾芽に着用させる。

そして自分も身に着けると、綾芽には中で待って居る様に言い、彼は甲板へと出て行った。

不安で青ざめる綾芽。

船窓から外を見ると、天まで届く身をくねらせる龍のような巨大な竜巻が迫っているのが見えた。

次第に波が荒くなり、船が揺れ始めると綾芽の身体は恐怖で震えた。

「綾芽様、こちらへ！」

甲板で状況を確認した葛城が戻って来ると、綾芽をブリッジへと誘導するが、船体が揺れて中々前へ進めない。

やっとの思いで操舵室に到達すると、葛城は扉を開け綾芽を先に扉の中に押し込む。

そして、自分も部屋の中に入るなり、船長に向かって声を掛けた。

「船長！状況は!?」

「最大出力で竜巻の進路から外れるように進めていますが、波のうねりが大きい。このままですと、転覆の可能性が高いです」