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「そんな…!!」

「大丈夫です。貴女の事は私がこの命に代えても！」

そう言うと葛城は震える綾芽を抱き締める。

大きく揺れる船の中で、立っていることもままならない。

綾芽は必死に葛城にしがみ付く。

「もし、船が転覆したら、そこの窓が開く様になっていますので、完全に浸水する前にそこから外へ出て下さい。そして船が沈む前に出来るだけ遠くへ逃げて下さい！」

船長がそう言うと、二人は同時に頷ずき、互いの身をしっかりと抱きしめ合った。

船の揺れが一層激しくなる。

このまま竜巻に飲み込まれるのではないかという恐怖が綾芽を襲い、彼女の身体を震え上がらせる。



その時だった。



ガクンと船が傾き、荒い波がブリッジに迫って来る。

滑り台を滑る様に、葛城と綾芽の身体は、床の上を滑る。

葛城は綾芽を抱えながら、必死に近くの計器類が収まっているカウンターを掴み、落下を食い止める。

ズドンという衝撃が船を襲い、バリン、ガチャンとガラスが割れる音がした。

大きな波は、次第に船内へと浸水を始める。

葛城は、窓のところまで綾芽を抱えて泳ぎ、窓を蹴破り船外へと脱出する。