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お嬢様♡レッスン

第11章 Lesson 4♥オモチャで遊びましょう

この家に迎えられてまだ、数日しか経っていないが、綾芽の中に、東乃宮の人間としての自覚が芽生えていた。

優しい祖父。

温かく迎えてくれた使用人達。

彼等の期待を自分は背負っている。

祖父が何故この様な事を許すのか、本当の目的は分からないが、子宝に恵まれる以外の理由が、多分何かあるのだろう。

東乃宮のお嬢様として、自分はどうあるべきなのか。

それを試されている様な気がした。

そう考えると、自然と平静になれた。

“お嬢様”にはお嬢様なりの持つべき誇りがある。

自分はまだ、にわか仕込みのお嬢様だけれど。

それでも、この世界で生きて行かなければ成らない。

家の為に成らない事には、どんな状況でも屈しては成らない。

逆に家の得に成るのであれば、負けて勝つことも必要だ。

今は屈する時ではない。

綾芽はそう判断した。

綾芽の身体の震えが止まり、静かな目で自分を見返して来た事に高月は驚いた。

その威厳に満ちた表情に。

まだ、お嬢様としての生活にも慣れていない、年若い娘が、自分を圧倒するくらいの信念に満ちた瞳で唯見ている。

恐怖に怯えるのではなく、怒りに満ちているのでもなく、愛でるのでもなく。

唯、静かに見ている。

道端に転がる石でも見るように。

何の感情もなく。

高月はそれに打ちのめされた。

矮小で醜い取るに足らない男である自分に屈する気はない。

綾芽の瞳がそう言っている。

自分では敵わない。

自分にもプライドはある。

でも、それは詰まらない、ちっぽけな物であったのだと高月は気付いた。

潔く負けを認めよう。

次の職場を、探さねば。

高月は静かに玩具のスイッチを切り、立ち上がった。

綾芽の拘束を解く為である。

高月は跪き綾芽の脚の拘束を解放すると、彼女の脚の甲に口付けを落とす。

それを綾芽は静かに見ていた。

彼は綾芽の全ての拘束を解くと、バスルームに向かい、湯舟に湯を張りバスローブを伴って綾芽の元に戻り彼女の肩に掛けた。

「綾芽様、申し訳御座いませんでした」

高月は膝を付き頭を提げた。

「私を解雇するなり、お気の済むようになさって下さい」

「高月、顔を上げなさい」

綾芽にそう命じられ、彼はそろそろと顔を上げる。

「中々、楽しい趣向でしたけれど、私には合わない様です」

「綾芽様?」

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