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誰も居ないのであろうか。

しかし、これだけ大きな邸だ。

誰も居ないなんて事はまずない。

使用人の一人や二人は居る筈である。

もう一度呼び鈴を鳴らしてみるが、反応はない。

ドア・ノッカーで叩いてみる。

すると、驚いた事に扉が開いた。

どうやら、呼び鈴の方は壊れていたらしい。

「どちら様でしょうか？」

ハチミツ色の髪をした青年が扉から姿を現しそう言った。

服装を見るに、この邸の執事だろう。

高月と同じくらいの年齢だろうか。

「突然、尋ねて来て申し訳ありません。日本の東京の大学の馬術部の者で、こちらで合宿等が出来ると聞いたものですから、下見をして来いといわれまして…」

莉玖は列車の中で、ロートマン邸が、観光用のホテルや馬術の合宿等で利用されている事を予め調べていたので、尤らしい理由を述べる。

「見学の方ですか？…はて、今日はそんな予定はなかった筈ですが…」

「すみません。思い付きで来たものですから…」

「そうですか。まあ、遠路遥々いらして下さったのですから、ご案内致しますよ？」

そう言うと執事らしき男はニッコリと微笑んだ。

「有難うございます！」