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『おお、そうしろ。それじゃあ、またな？』

「ああ…」

莉玖はSkypeを切ると、立ち上がった。

ここにいつまでも居座っていても仕方がない。

莉玖は立ち上がると、一度街へ戻り葛城と合流するまでの時間をどうやって潰そうかと考えた。

取り敢えず、街までの道を歩く。

道中、考えるのは綾芽の事。

彼女は自分が『綾芽』と言う名前である事は知っている様である。

唯、自分の事は覚えていない。

葛城の事は覚えているのだろうか。

何故、記憶を失くしてしまったのだろうか。

『何故』『どうして』

そればかりが莉玖の頭の中でぐるぐると回る。

そんな事ばかりを考えていると、気が付けば街へと辿りついていた。

莉玖は手近なデリに入ると、パンと惣菜を購入し、宿へと戻る。

簡単な食事を済ませ、ベッドの上へと転がった。

何をしていても落ち着かない。

こんな時に琉聖や巽だったら、この状況だったらどうするだろう。

莉玖は二人の幼馴染の事を思った。

あの二人は、逆境を楽しむ前向きさがある。

それで掬われた事が莉玖には何度もあった。

その彼等が珍しく落ち込んだ事がある。