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お嬢様♡レッスン

第100章 再会

「いえ…。俺に出来るのはこんな事くらいしかないですから…」

そう言うと莉玖は俯いてもじもじした。

元ではあるが、使用人最上職に就いていた葛城と二人きりで居ると、流石に緊張する。

「緊張しているのですか?普通にして下さい。今は私は貴方の”上司”ではないのですから…」

「でも…。何れは主人となる方です…」

「それは分かりませんよ?綾芽様は他の方とご結婚なさるかも知れません…」

葛城はそう言って微笑む。

その笑顔は何だか寂しそうに莉玖には見えた。

綾芽の記憶は戻るのだろうか。

彼女は一体、どうするつもりなのだろうか。

莉玖の頭をふとそんな事が横切る。

葛城も不安なのだろうなと、莉玖は思った。

綾芽の執事として邸内で働く様になるまでは、主に厩舎廻りの仕事をしていた莉玖は、葛城の様な上級使用人は遠い人だった。

偶に見かける彼は、いつも笑顔を絶やさず、しかし心の内を人に見せる隙のない人物に思えた。

それは邸内で働く様になってからも変わらない印象であった。

しかし、綾芽との仲を認め”唯の恋をする一人の男”となった今の彼は、感情を表に出す様になったと莉玖は思う。

それでも、習慣が抜けないのか、未だに緊張するのであるが。

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