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お嬢様♡レッスン

第13章 お嬢様の休日

電車を乗り継いで綾芽と高月は、某夢と魔法の国に来ていた。

「デートの定番と言えば、ここですね!」

にっこり笑って高月が綾芽の顔を覗き込む。

高月の意外なチョイスに綾芽は少し驚いた。

「雅哉さん?」

「なんですか?綾芽ちゃん?」

「テーマパークに来るなら、先にそう言って下さいよ!私の格好、思いっきり浮いているじゃないですか!」

「そんな事は御座いませんよ?とても良くお似合いです」

高月は本気でそう言っているのかも知れないが、買い物デートだと思っていた綾芽の服装は夢と魔法の国を訪れるには、ややドレッシー過ぎだ。

こういう場所に来るには、動きやすく相応しい服装がある。

「さぁ、参りましょう。綾芽ちゃん?」

そう言って高月は綾芽の手を取り歩き出す。

高月はヒールの綾芽を気遣い、ゆっくりと歩く。

そんな彼の気遣いは流石執事だなと綾芽は思う。

スマートな身のこなしと、容貌に振り返る女性も居る。

「何か乗りたいアトラクションは御座いますか?」

「あのね、雅哉さん。そのお話しの仕方はどうかと思うの…もう少し普通に話して欲しいなぁ」

「かし……あ、いや、分かったよ。ごめんね?」

「ううん。使い慣れていないのは、分かってるんだけど…」

「大丈だよ。俺だって一日中執事でいる訳ではないから」

(あ、今、『俺』って…。高月さんて普段は自分の事を『俺』って言うんだ)

素の高月の一面を覗き見しているみたいで、綾芽は少しドキッとした。

日曜日の魔法の国は人でごった返していた。

幸せそうなカップルや家族連れが思い思いに楽しんでいる。

綾芽は子供の頃、一度だけ両親と訪れた事があった。

それを思い出し、切なくなった。

振り返って幸せそうな家族を見る綾芽に、高月の心も切なくなる。

今迄、付き合ってきた女性達がこんな表情を見せても何とも思わなかった。

人は人。

他人は他人。

他人の心の内など分かりはしない。

だから、他者の心に踏み込む気はなかったし、踏み込ませる事もなかった。

唯、今は違う。

土足で踏み込むつもりはないが、許されるのであれば近付いて、その心の柔らかい部分を包みたいと思っていた。

そう思わせたのは、綾芽が初めてだった。

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