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「どうかしましたか？」

「あ…。いえ、綾芽にスマホを返して貰うのを忘れていました…」

「そうでしたか…。それでは、返して頂くまで、こちらで観光でもして行きますか？」

「いえ、そんなっ！」

「いい機会です。滅多に休む事が出来ないのですから、羽根を伸ばしなさい」

そう言って葛城は笑った。

莉玖は彼の言葉に甘えて、スマートフォンが戻って来るまで、この国にもう少しだけ滞在する事にする。

彼等が街へ戻って昼食を摂っていると、葛城のスマートフォンがメールの着信を伝える音を鳴らした。

葛城は端末を取り出すとメールの内容を確認して莉玖に告げる。

「案外、早く帰国出来そうですよ」

どうやらロートマン氏は物分かりの良い人物らしい。

葛城はそう思った。

彼は、『明日の16時に伺います』と返信し、スマートフォンをポケットに仕舞った。

16時にしたのは、アフタヌーン・ティの時間であれば、わざわざ来客の為の支度をしなくても済むであろうと考えたからだ。

それから彼等は男二人で、近くの観光スポットを巡ってみる事にした。

折角、車があるのだからと、ランズ・エンド（※1）とミナック・シアター（※2）を訪れてみる事にした。



※1：ランズ・エンド(LAND'S END)
イングランド最西端といわれている所。

※2：ミナック・シアター(MINACK THEATER)
ロウィーナ・ケイドと言う女性が一人で50年の歳月を費やし、作り上げた野外劇場。