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少し苦しそうに美しい顔を歪めて、そう語るフレデリク。

その言葉を聞いてウィリアムは『ふっ』と微笑んだ。

「分かっているよ。フレデリク。それは僕も同じ気持ちだ。

けれどね、綾芽の気持ちを尊重して上げてくれないか？

彼女がここに残ると決めたのは、お前の為でもあるけれど、学ぶ為でもある」

ウィリアムは弟の頬を包み、諭す様に言葉を続けた。

「彼女が自分の意思でああ言ったのには訳があると思う。

これは僕の推測でしかないけれど、彼女はこれから上に立つ人だ。

人も育てていく立場になる。

それがどういう事なのかを彼女なりにこの場を通して学びたいんじゃないかなって僕は思ったんだ」

兄の言葉にフレデリクは目を見開いた。

そんな事まで考えていたのかと。

「僕はね、彼女が一時期だけでも僕達の傍にいる事を選んでくれた事に感謝している。

例え、お前のオマケだとしてもね。その気持ちだけで十分なんだ。

だから、あとは彼女の気持ちを尊重したい。

彼女が愛される事を望めば、それを与え、学びたいと思う事があれば、その機会を与えてあげたい。そう思ってる」

そう静かに語るウィリアムの言葉は綾芽の心に沁み渡り、彼女の瞳を濡らした。

こんな風に想われていたなんて。

綾芽は両手で口元を抑え、嗚咽が込み上げるのを必死に堪えて肩を震わせた。