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「そ…そんな事は…」

エミリアの探る様な視線に、綾芽はしどろもどろになる。

それを知られた所で、何か問題があるわけではないのだが、彼等の名誉に傷が付くかも知れないと言う不安はある。

「綾芽は近い将来、兄さんの大切なビジネスパートナーだからね。勿論、彼女の婚約者も僕達は知ってるよ。僕らは彼から、彼女を預かってるんだもの、大切に扱うのは当然でしょう？」

「成程ね。確かに、我社にとって東乃宮コンツェルンとの太いパイプラインは重要だものね」

フレデリクの言葉に納得したように頷くエミリア。

綾芽はホッと胸を撫で下ろす。

「まぁ、格式ばったものでもないし、気楽に来てくれれれば良いわ」

そう言うとエミリアはお茶を飲み干して帰って行った。

「『格式ばったものではない』って言うけどさ、伯爵家だし家と比べたら結構な規模だと思うけどね」

「えっ！そんなところに御呼ばれしても平気かしら…」

「大丈夫だよ。エミリアがパーティまでに色々と教えてくれるさ。キミの家庭教師なんだから」

「二人の顔に泥を塗らないように、きちんとしなくちゃね！」

「ふふ。当然。エスコートする僕達に恥をかかせないでよね！？」

そう言ってフレデリクは少し意地悪な笑みを浮かべる。

「まぁ、いざとなれば僕が助けてあげなくもないけど？」

そんな風に言ってはいるが、いざとなったら彼は何があっても彼女をサポートするであろう。

（ほんと素直じゃないんだから。そこが可愛いんだけどね）