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しかし、綾芽はそんな事は気にならなかった。

何故なら、食事の席で隣になったエミリアの甥である男性がひっきりなしに彼女に話し掛けて来るからである。

彼はダグラスと名乗った。

彼の勢いに飲まれて、綾芽がタジタジになっていると、エミリアがやって来て助け舟を出してくれる。

「ダグ？そんなに綾芽が気に入ったの？でも、そんなに捲し立てたら、綾芽が吃驚するでしょう？駄目よ？余裕を持って接しなさいな」

叔母らしく諭すエミリア。

「だって、エミリー。こんなに可愛い日本の女の子と話す機会なんてそうないんだから、仕方がないだろ？」

そう言って熱い視線を綾芽に送るダグラス。

少しワインで酔ったのだろうか。

お酒は飲めない方ではなかった筈だと、叔母であるエミリアは思った。

（ひょっとして綾芽に一目惚れでもしたのかしら？困ったわね。綾芽には婚約者が居るのに…）

そう思ったエミリアはダグラスに釘を差して置く事にした。

「ダグ、綾芽には日本に婚約者が居るのよ？あまり夢中にならないように気を付けてね？」

「え？キミ、もう婚約者が居るの？」

驚いた様に綾芽を見るダグラス。

そんなにも驚かれる事なのかと思いながら、綾芽は『ええ』と短く答える。

すると、ダグラスは少しがっかりした表情を見せた。

（これで解放されるかな？）

綾芽は彼の表情からそう思ったのだった。