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お嬢様♡レッスン

第15章 Lesson 5♥優しくタッチしましょう

「凄い!凄いです!」

綾芽は立ち上がって拍手を贈る。

「大した事はありませんよ?」

そう言ってニコッと笑う速水。

綾芽の部屋がある3階の一室の音楽室に2人は居た。

速水は綾芽に覚えて貰う為の課題曲を手本に弾いて見せ、今、綾芽から賞賛を受けている。

弾いて見せた曲は、そんなに賞賛される程、速水に摂っては難しくはないので、気恥しかった。

「お嬢様にも、弾ける様になって頂くのですからね?」

速水が用意した曲は、先ず練習用にベートーヴェンの『トルコ行進曲』

行進曲はリズムが取りやすく初心者向きだ。

そしてこの曲の難易度は小学生でも弾けるくらいに優しい。

次にシューマンの『トロイメライ』

ゆったりとしていて、技術的にはそんなに難易度は高くはなく、弾きやすい曲だ。

しかし、表現力は要される。

それからショパンの『華麗なる大円舞曲』

華やかなのだが、弾いてみると意外と難しくはない。

ダイナミックかつ華麗に弾きこなしたい1曲である。

また、ワルツも行進曲同様、リズムが取りやすい。

取り敢えず、この3曲をマスターしてもらい、次を考えようと速水は思った。

「お嬢様はピアノを弾かれた事は?」

「う~ん…。悪戯で“猫踏んじゃった”を弾いた事があるくらいです」

申し訳無さそうに綾芽がそう言うと、速水は白い歯を見せて笑った。

「充分ですよ。“C(ツェー)”の位置が何処にあるかさえ分かって居らっしゃるなら」

「う…。Cって何?」

「所謂“ド”の事です」

「何で“C”なの?“A”じゃないの?」

「お嬢様、そこに行っちゃいます?」

「えっ!(まずいのかしら…)」

「御説明致しますと色々と長くなりますが、宜しいでしょうか?」

「結構かかるんですか?」

「はい。それに付随する事も御説明しなければなりませんし…」

「ええと、それなら良いです。自分でネットで調べてみます」

「そうですね。ご自身で調べられた方が、知識になりますから」

「それもそうですね!自分で調べた方が、確かに自分の中に残りますね」

「ええ。それでは御説明は省かせて頂くとして…。お嬢様、こちらにお座り下さい」

そう言って速水は綾芽をピアノの前に座らせ、自分はその隣に腰を下ろした。

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