無料で楽しめるちょっと大人のケータイ小説

「はい。速水です。葛城さん!?お久し振りです。はい。お陰様で元気です」

速水琉聖はその電話をとある場所で受けていた。

「今ですか？今は恵莉奈お嬢様の執事学校立ち上げの為の打ち合わせで…。はい。来年の春に開校する予定で、今いろいろと準備を…」

彼は綾芽の執事を解任になった後、自分のそれまでの経験を活かす為に、恵莉奈が開く執事学校の講師として働こうと、彼女の事業の立ち上げの準備を姫川と協力して動いていた。

今はその打ち合わせの為に、恵莉奈と姫川の自宅兼事務所のマンションにお邪魔をしているところである。

「グループで働く気ですか？私に務まるかどうか…。綾芽ちゃん…いえ、綾芽お嬢様の為…ですか？でも…私は…」

速水の口から久し振りに聞く、親戚の名前に恵莉奈は耳を欹てた。

「はい…、はい…。少し考えさせて頂いても宜しいでしょうか？はい、数日中にはご連絡させて頂きます。はい。それでは失礼致します」

速水は通話を終えるとスマートフォンの終了ボタンをタップし、それをポケットにしまう。

目の前に居る恵莉奈と姫川の視線が自分に集中している事に気付き、首を傾げた。

「今の電話、葛城から？何だったの？」

恵莉奈は今の通話の内容を問いただす。

「ええと…、葛城さんがグループの監査機関を新たに設けたいみたいで、そこで働かないかって…」