無料で楽しめるちょっと大人のケータイ小説

他の秘書達も狙っているのは須藤も分かっている。

しかし、何故葛城が今の地位に居るのか。

その理由を分かっていない。

彼は会長である宗佑の孫娘、綾芽の婚約者であるから今の地位があるのだ。

葛城が綾芽と婚約したと言うのは周知の事実である。

にも拘わらず、綾芽の存在を無視出来るのか。

そこが謎である。

「少しは落ち着きましたか？」

向の席に座る葛城は、そう言って須藤に微笑みかける。

彼の優しい笑顔に須藤の心臓はドキリと跳ねる。

葛城の問い掛けに須藤ひとみは、頷いた。

「それでは、社長はいらっしゃるかをお伺いしましょう」

葛城は本来の目的である社長の所在を尋ねる。

彼女に確認しなくても、内線を一本入れれば済む話であるし、葛城は彼が社内に居ない事は既に確認済であるのだが。

「ええっとぉ…、社長はぁ、昨日のぉ夕方からぁ台湾へぇ出張中でぇ…居られません～」

相変わらず語尾を伸ばした話し方に、葛城は内心では苛々を募らせながらも、それを我慢する。

「そうですか。分かりました。有難うございました。落ち着いたのでしたら、もう、お下がりなさい」

そう言うと葛城は立ち上がり、自分のデスクへと歩いて行く。

「それから、お茶は好きな時に自分で淹れますので、お忙しい秘書である貴女のお手を煩わせて頂かなくても結構ですよ？」

葛城はニッコリと笑って皮肉たっぷりにそう言った。