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お嬢様♡レッスン

第110章 葛城の苦悩

「お疲れ様です。まだ、残っていたのですか?」

そう言って労いの言葉を掛ける。

机の上に視線を落としていた秘書が、彼の声に気付くと顔を上げて葛城の方を向いた。

橘あかりだった。

「お疲れ様です。葛城取締役がお帰りになるまで、待機していようかと思いまして…」

須藤の件があり、秘書達に言葉遣いを注意したお陰か、彼女の言葉遣いも聞き苦しくはなくなっていた。

やれば出来るじゃないか。

葛城はそう思う。

そう、決して彼女達の能力は低くはない。

私立のお嬢様大学であろうと、ある程度の偏差値は必要とされている学校で学んで来ているのだ。

「私の事はお待ち頂かなくても結構ですよ?遅くならない内にお帰りなさい」

「はい。ですが…」

「何か?」

「あの…取締役にご指導頂きたい事がありまして…」

「私に?」

「はい。取締役は会長のお宅で執事として働かれていた事があると伺いまして、それでお茶出しのマナー等をご指導頂けたらなと…」

「そうですか…」

そう言えば、彼女の淹れたお茶はとても不味かったと言う記憶が蘇る。

向学心がある人間は嫌いではない葛城は、そう言うことであればと彼女の指導を引き受ける事にした。

これがまた悩みの種になる事も知らずに。

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