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お嬢様♡レッスン

第110章 葛城の苦悩

「取り敢えず、これで患部を冷やして下さい」

そう言うと葛城は顔を背けたまま、橘の手を取ると、彼女の手に布巾を握らせる。

そして自分のスーツのジャケットを橘の肩に掛けた。

こうすれば下着は隠れるだろう。

「薬を取ってきます」

葛城は顔を背けて橘の方を見ないように気を使いながら、彼女の脇をすり抜けて秘書室へと向かう。

そこには応急セットが常備されていた筈だ。

葛城は目当ての薬を見つけると、それを取り上げ廊下に出る。

すると給湯室の方から、橘が歩いて来た。

「手当は取締役室でお願いします。立ったままじゃ、薬塗り難いでしょう?」

そう言うと彼女はさっさと葛城の役員室へと入って行く。

あれだけ騒いでいたのに、平然として。

そこで彼は、橘に嵌められた事に気付いた。

「まったく…。悪い部下にはお灸を据えなければなりませんね」

葛城は秘書室に戻ると、内線で警備室を呼び出す。

『はい。警備室です』

「すみません、葛城です。お手隙の方はいらっしゃいますか?」

『どうかされましたか?』

「実は、部下が火傷をしたようなのですが…」

葛城は事情を説明し、救急車を手配し、誰かを寄越す様に伝える。

『畏まりました』

警備担当者は了承すると内線を切り、取締役室に一人派遣した。


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