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お嬢様♡レッスン

第110章 葛城の苦悩

葛城は受話器を置くと、取締役室に向かう。

相手は秘書とは言え、本社の機密書類を葛城は持っているのだ。

無論、そのような重要書類は金庫の中に保管してあるのだが、あまり橘を一人にしておくのは良くないであろう。

気は進まないが、直ぐに警備の者も到着する筈である。

それに間違いが起こらないように、警備の者には取締役室を監視する様に伝えてある。

あとは橘を上手くあしらえば良い。

そう思い、葛城は取締役室の扉を開けた。

橘は、下着姿に葛城のジャケットを羽織り、ソファに肩肘を立てて横たわっていた。

「取締役!遅かったじゃないですか。私…痛くて…」

そう言って橘は脚を広げて見せる。

葛城は溜息を一つ吐き、心の中で毒付く。

(痛いのは貴女のそのはしたない姿でしょうに…)

喉まで出かかった言葉を飲み込み、葛城は笑顔を作ると、橘に救急車を呼んでいたので遅くなったと伝えた。

「え!?」

葛城の言葉に驚く橘。

「貴女の綺麗な肌に、痕が残ってしまったら大変ですからね?もう間もなく来ると思いますよ?」

葛城は彼女の傍へは近寄らず、扉を背にしたまま、そう言った。

「取締役が手当てをして下さるんじゃ…」

橘は、葛城に近付こうと起き上がる。

「そのままで!動いて痛みが酷くなったら大変です」

葛城はそう言って手で彼女の動きを制止した。

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