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お嬢様♡レッスン

第110章 葛城の苦悩

そうこうしている内に、扉をノックする音が聞こえる。

どうやら警備の者が来てくれた様だ。

「橘さん?警備の方が来てくれた様ですが、その恰好で大丈夫ですか?」

そう葛城が指摘をすると、慌てた様子で橘は彼の上着で身を隠した。

葛城は、彼女が肌を隠すのを確認し、扉を開ける。

「失礼します。葛城さん。もう間もなく救急車が到着致します」

警備員は部屋へ入って来るなり、葛城にそう伝えた。

「有難うございます。それではここをお願いしても宜しいですか?私は給湯室を片付けなければなりませんので…」

「畏まりました」

警備員がそう言って葛城に敬礼をすると、彼は部屋を出て給湯室へ急ぎ、その場をてきぱきと綺麗に片付け始めた。

程なくして、エレベーターのチャイムが鳴り、数人が降りる気配がする。

救急隊員だろう。

彼は床に零れたお茶を丁寧にふき取ると、役員室へと戻った。

今頃、橘は慌てふためいている事だろう。

それを想像すると可笑しくてたまらないと言った風に、彼は口の端を吊り上げ廊下の壁に凭れる。

役員室からは救急隊員の質問する声と、しどろもどろでそれに答える橘あかりの声が聞こえて来た。

愚かな行動を取れば、それが自分に返ってくる事。

それを理解してくれればいいのだが。

葛城はそう思いながら、役員室から担架で運ばれて行く橘を見送ったのだった。


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