無料で楽しめるちょっと大人のケータイ小説

昼休みの時間になると、須藤は橘を誘って近場のカフェへとランチに出掛ける。

橘を説得してみよう。

そう思っての事だった。

彼女達は席に着くと、それぞれランチセットを注文する。

料理が来るのを待ちながら、須藤は最近の研修について話しながら、本題を切り出すタイミングを見計らった。

「秘書の仕事って思ったよりも大変だよねぇ？」

「本当よね！私、パパには『お茶だけ入れて役員さん達に可愛がって貰っていればいいだけだから』って言われてたのに…」

橘は須藤の言葉を受けて、毛先を弄りながら、そう答える。

「でも、お茶の淹れ方を教わった後に、専務にお茶を出したら『とても美味しい！』って褒めて貰えて嬉しかったな。橘さんは？」

「んん～？そうねぇ…確かに副社長ったら目をこぉんなに見開いて、私と湯呑を見比べてたけど…」

そう言いながら橘は副社長の顔を真似て見せる。

「お茶なんて、お茶ッ葉にお湯を注ぐだけじゃない！何であんな面倒くさい事しなきゃいけないのかしら！」

「ええ？でも橘さんのお茶は正直言って苦くて飲めた物じゃなかったわよ？」

「そう？私は緑茶は飲まないから分からないわ」

そんな会話をしていると、二人のランチが運ばれて来る。

二人はフォークを取り上げると、それぞれ料理を突き始めた。