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「それで…キミは彼女を…？」

「それは『抱いた』のかと言うご質問ですか？それなら『NO』です。私はこの様な自分を安売りする女性は嫌いですから」

そう言いながら葛城は、ICレコーダーに手を伸ばすと音声を止め、懐に仕舞った。

「どうしますか？彼女の為に、ご自身の地位をお捨てになりますか？」

目を細めながら副社長を見据える葛城。

副社長はブルブルと身体を震わせている。

それは、怒りか。

それとも恐怖なのだろうか。

「そ…そんな事、出来る訳なかろう！」

葛城を睨み付けて、彼は声を荒げる。

対する葛城は綺麗に整った顔の表情を崩さず、彼の視線を受け止めた。

「おや、ご自身の保身の為に、部下を切り捨てますか？」

「ぐっ……！キミの目的は一体何なんだ!?」

「目的ですか？私の目的は先日、会議でお話したとおり『改革』ですよ？」

そう言うと葛城は、肘掛に両手を付いて身体を支えて立ち上がる。

「私としても、出来るだけ解雇は避けたい」

葛城は窓際まで歩くと足を止め、窓の外を見る。

向い側のビルでは、忙しそうに人々が動き回っていた。

「新しく人を募集し教育するよりも、今居る人員を再教育する方が経費は掛からない。私はそう思っています」